以前からお話しているとおり、民法が改正される話が進んでいます。 民法改正について、1つ1つテーマを取り上げ、順番に、丁寧に分かりやすく解説していく予定です。
今回のテーマは、「中間利息控除」です。
中間利息控除とは
中間利息控除とは、将来受け取るべきお金を前払いしてもらう場合に,将来にわたって発生するはずの利息分を差し引くことをいいます。
実際にお金を受け取った時点から、本来(将来)受け取るはずだった時期までに発生するはずの利息を「中間利息」といい、それを差し引くことを「控除」といいます。
中間利息控除の改正:規定の新設
中間利息控除は、主に、交通事故や労働災害など偶発的に起こった事態に際して、加害者と被害者が損害を公平に分担するために、判例によって、実務上行われてきました。
つまり、現行の民法には、中間利息控除に関する規定がないのです。
中間利息の利率、控除する際の計算式とも、判例、実務が先行していました。
今回の民法改正で、判例法理に従い、「損害賠償請求権発生時の法定利率」で、中間利息を控除することが明文化されました。
ただし、民法改正で、「法定利率」そのものが改正されることになりましたので、改正前の利率がそのまま適用されるわけではありません。
※民法改正後の法定利率についてはこちら→民法(法定利率)が改正されます!
中間利息控除の改正:新417条の2
民法改正により、中間利息控除について、次のとおり、規定される予定です。
(中間利息控除)
改正民法第417条の2
第1項 将来において取得すべき利益についての損害賠償の額を定める場合において、その利益を取得すべき時までの利息相当額を控除するときは、その損害賠償の請求権が生じた時点における法定利率により、これをする。
第2項 将来において負担すべき費用についての損害賠償の額を定める場合において、その費用を負担すべき時までの利息相当額を控除するときも、前項と同様とする。
中間利息控除改正の影響
中間利息控除が改正されると、どのような影響が出るのでしょうか?
新民法417条の2にもあるとおり、中間利息控除は、「将来において取得すべき利益についての損害賠償の額を定める場合」に行われます。
このような場合の具体例としては、「将来取得すべき利益」、すなわち、「逸失利益」が問題となるケースであり、先ほど述べたとおり、交通事故や労働災害などで被害者が死亡したケースや後遺障害を負ったケースが挙げられます。
死亡や後遺障害により、一部又は全部の労働能力が喪失し、将来得られたはずの収入が得られないというケースです。
このようなケースで、被害者側が受け取る損害賠償(逸失利益)から、中間利息が控除されます。
損害賠償(逸失利益)から利息分を減額するわけですから、利率が高いほど多く減額されることになります。
現行民法は、利率を固定、5%を控除していたところ、民法改正により、まずは3%に利率が引き下げられ、その後市場により利率が変動する方式をとりました。
したがって、ひとまずは、損害賠償(逸失利益)から控除される利息が下がりますので、被害者の受け取る損害賠償額(逸失利益)は増額することになります。
なお、中間利息の具体的な利率は、損害賠償請求時で固定されるので、具体的なケースで、市場による利率の変動の影響を受けることはありません。
次回、弁護士コラムもご期待下さい。
(文責:弁護士 若井)
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