以前からお話しているとおり、民法が改正される話が進んでいます。 民法改正について、1つ1つテーマを取り上げ、順番に、丁寧に分かりやすく解説していく予定です。
今回のテーマは、「債務不履行の解除②」です。
前回は、債務不履行解除の根本的な改正について、説明・解説しましたので、今回は、その他の改正につて説明・解説します。
債務不履行解除の改正:前回のおさらい
債務不履行の解除とは、債務者が債務を果たさない(債務不履行)場合に、債権者に生じる契約の解除権、または、債権者が契約を解除することをいいます。
債務不履行により契約を解除するには、現行民法の規定及び一般的な考え方として、債務者の帰責事由が必要とされていますが、民法改正により、債務者の帰責事由は不要であるという根本的な改正がなされます。
さて、債務不履行解除では、以上のほかにも、重要な改正が予定されています。
軽微な債務不履行の場合には解除できない(新541条但書)
前回、債務不履行で契約を解除する場合には、債務者の帰責事由は不要になると説明しましたが、債務者のミス、過失、故意によらないわずかな不履行で契約が解除されてしまうのは、債務者に酷といえます。
また、当事者が契約を締結するとして、その契約から当事者が負う債務は、1つとは限りません。
購入する商品におまけがつくことや、「●●をご契約の方に、今なら××をプレゼント!」などのサービスは皆様よく見るところだと思います。
このような契約では、「●●を契約」から生じる債務が中心的な債務で、「××をプレゼント」という部分は付随的な債務といえます。
付随的なサービスがなかった場合に、契約解除を認めるのも、同様に、債務者に酷といえます。
このような事例への対応について、現行民法には規定がありませんでしたが、判例は付随的な債務のみの不履行の場合に解除権を否定するものがありました。
民法改正により、判例の考え方を一般化し、不履行が「その契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるとき」には解除できないという形で、明文化されることになりました。
一定の場合には無催告で解除できる(新542条1項)
契約の解除には、相当の期間を定めて催告(債務を履行するよう請求)をしてからでないと解除できない催告解除と、催告なく解除できる無催告解除とがあります。
現行民法では、
・履行不能(543条)
・定期行為(一定のタイミングで履行されなければ契約の目的を達成できない債務。542条)
について、無催告解除が認められています。
これらの規定以外に、判例では、不履行の態様が著しい場合に特約がなくても無催告解除を認めるものがありました。
このような場合に、催告し、かつ、相当期間待たなくては解除できないとするのは、債権者に酷であるという判断からでした。
今回の民法改正では、このような判断を整理・拡張し、現行民法の上記2つの場合のほか、以下の3つの場合にも無催告解除ができると定めました。
・債務者の明確な履行拒絶
・一部の履行不能または履行拒絶があり、残りの部分では契約目的が達成できない場合
・その他、催告をしても契約目的が達成できる見込みがないことが明らかな場合
なお、民法の規定にかかわらず、当事者が契約によって無催告解除を認めることは可能です。
債務不履行があった場合に、催告や相当期間を待たず、ただちに契約解除できるようにしておきたい場合、無催告解除の特約を定めておくのが有効です。
終わりに
以上、2回にわたって債務不履行による契約の解除の改正を説明・解説しました。
前々回の債務不履行の損害賠償請求や、前回の債務不履行解除の抜本的な改正に比べ、今回の内容は比較的分かりやすいものだったのではないでしょうか。
次回、コラムもお楽しみに。次回は、「危険負担」とテーマとする予定です。
(文責:弁護士 若井)
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